「紡ぐ」ということ、「織る」ということ

 

音色、響き、調べ、奏でる、歌う…

音楽を表現する時に使われる言葉は多様にあります。

片や紡ぐ、織る、という言葉そのものは音楽を顕す言葉ではありません。

しかし、この二つの言葉は私の音楽を表現する上でとても大切なイメージを持っています。

 

紡ぐ…繭から糸を紡ぐ、一つひとつ言葉を紡いでいく、などと使われますね。これ、音を創り出すこと、音符を繋げていくことのイメージにぴったりではありませんか?

 

そして紡ぐというのはとても優しく大切に想いを込めて携わる作業なのではないかと思います。私個人の音楽表現として音を紡いでいく、指揮者として楽団の音色や響きを紡いでいくことをとても大切にしています。

 

織る…スコットランドの伝統的な織り物の柄として有名なタータンチェックは日本で言えば家紋のように格式や家々によって異なると言います。

 

文字が発達してなかった時代からアイデンティティーとしての主張が、積み重ねられた歴史をも織り込んできた風格が感じられます。

どの国にも伝統的な織り物があり、デザイナーたちは独創的で見る者を魅了するデザインを施す。

 

糸を縦横に織り成すだけでなく、そこに織り出されていく生地の風合いや色合い、柄、そしてそれを織る人の想いとそれを見る人や身に纏う人の想いを想像して織り上げていく、そういうイメージを持って楽曲を創っていくことを心がけています。

 

音符を紡いでいく、フレーズやリズムを紡いでいく、個々の異なる音をひとつに紡いでいき、ハーモニーを織り成し、曲想を織り成し、そして楽曲が形成される。

 

関わる人の技術、知識、経験、感性、想いを駆使して…。

 

そうしてさざなみらしい曲が産まれ、さざなみサウンドが育まれてきております。

 

しかし、さざなみウインドアンサンブル常任指揮者の私にとってこの想いは音楽創りだけではありません。楽団としてのさざなみウインドアンサンブルそのものもそのように紡ぎ、織り成していきたいと願っております。